2011年 03月 01日
建築建物の安全基準とは
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先週にニュージーランドのクライストチャーチ市を襲ったマグニチュード6.3の地震がありました。
その後も余震がM5.6を含むM4.0以上が続いてるようで、被災地の様子なども報道されました。
改めて建物の安全について、命の尊さについて考えさせられます。
日本の地震では平成7年阪神・淡路大震災から16年が経ちましたが、災害の記憶が今でも鮮明に甦ります。地震後は旧構造設計基準建物、昭和56年以前に建設された建物が見直され、耐震診断・耐震補強が進められています。官庁建物や学校建物に耐震補強が完了した建物を見かけられる様になりましたが国内全体的にはまだまだのようです。建物の安全性の改善を図る事の重要性は明らかです。
阪神淡路大震災後、マルタ設計では今まで蓄積した技術(耐震診断・耐震補強)を生かし、耐震診断・免振事業本部を創設しました。
本部創設時から、耐震診断基礎資料として欠かせない建物調査を社内で担当している私は、業務に携わりより的確に、より安全な建物とし、社会資本の充実を目指して歩んでまいりました。
耐震診断に必要な建物調査とは、分かりやすくたとえれば、病院で患者さんの中には色々な病があり、患者さんの申告では正しい診断ができないので、問診、触診、ときには、精密検査を実施して、一人一人の病状に基づき的確な病を把握して処方箋をだし、病を治療する様な事です。
建物調査では、既存設計図と現況建物との照合、経年調査では、ヒヤリングで地震被害、火災被害、漏水箇所、改修経歴のあり、なし、きれつ調査・爆裂調査・コンクリート躯体からサンプルを取り、設計強度の確認をする。建物によってはコンクリート内の主筋本数柱 Hoopピッチの非破壊検査よる確認調査、又はハツリ調査を行います。鉄骨構造建物の場合は仮設足場を組み鉄骨の部材調査をします。鉄骨柱脚についてはアンカーの確認調査をします。
建物1棟ごとの状況を的確に把握して耐震診断の経年指標:T の資料とします。
(調査写真は2008年5月ブログ「会社理念」のなかに投稿されていますので参照して下さい)
建物の耐震性能は構造耐震指標Isを査定する事により、評点で示されます。
Is:構造耐震指標=保有性能基本指標Eo×形状指標Sd×経年指標T
耐震診断には2次診断・3次診断がありますが、最近の官庁発注は2次診断が多いようです。
第2次診断法とは建物の鉛直部材(柱・壁)の強度・破壊形式とじん性能からEo指標を算定する診断です。
第3次診断方とは骨組み(柱・壁・梁)や基礎の浮き上がりなども考慮してEo指標を算定する診断です。
耐震診断の構造解析にはもちろん経験も必要です。建物形状;Sdにより、ピロティ形態、壁位置による全体バランスの考慮、地震時の力の流れを把握、元構造設計者の解析思考を理解して耐震診断します。診断にあたりベースとなる基準はあります。
構造判定指標Iso =0.6 で一般建物は地動250Gal(中地震 計測震度5強)程度の十勝沖地震を想定して設定されています。構造判定指標に重要度用途係数も有ります。
文教施設等はより安全性を確保する為には1.25倍 Iso =0.75、さらに重要度の高い消防署・警察署等の重要庁舎に関しては1.5倍 Iso =0.9。
この用途係数は阪神・淡路地震後、庁舎建物の被害状況を調査し、その分析結果をふまえて改訂版をとりまとめた官庁営繕部総合耐震計画基準の中に、新建物(一般)用の設計用地震力に大きな変更はないが、官公庁建物に1.0倍【耐震3級】・1.25倍【耐震2級】および1.5倍【耐震1級】という用途係数を設計用地震力に乗じるよう、かつ耐震診断においても用途係数を考慮するとしています。
診断結果、構造耐震指数Is=0.6満たない耐震性能が不十分であるものについては耐震補強設計を行う。(2次診断でIs=0.3以下の場合は早急に改修または改築を計画する)
新築建物の構造の動向について話しますと、マルタ設計では地震に強い免震構造建物(建物と地盤との間に免震装置を施し地震の揺れを吸収し、地盤の揺れを直接建物に伝わりにくくした建物)を都立高校では初めて採用された都立高校(大崎高等学校)校舎(担当設計者は同高校の特殊な外構工事の内容で先月のブログに投稿しています)や賃貸住宅では貴重な免震構造建物を採用したエスペランスYAMADAなどを手がけております。
その他に工法として制振構造が有ります。制振構造は新築建物や耐震補強の工法としても採用されています。建物に生じる振動エネルギーを吸収する、同軸型振動系ダンパーが代表例です。
一般の方も最近では戸建、分譲マンションのパンフレットで見かけるかと思いますが、長期優良住宅・マンションに認定と表示された建物が販売されています。
住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が民間金融機関による長期固定金利住宅ローンの提供を支援している長期優良住宅取得支援制度、【フラット35】Sで、優良住宅取得に必要な技術基準を満たした建物の金利を当初10年間1%引き下げる処置で、基準を満たせば10年後も0.3%引き下げる金利の優遇制度です。優良住宅に必要な技術基準について話ますと構造の耐震性・耐久性に関する基準以外に長く安心して暮らせる工夫、長持ち住宅にするための基準、夏は涼しく冬は暖かく快適に過ごせる、省エネルギー性の基準、お年寄りにも優しいバリアフリー性など必修基準となって高品質の住宅基準となっています。
必修基準のなかで耐震性について説明しますと、100年に一度ごくまれに起こる地震による力(建築基準法で求められている地震力)の1.25倍【耐震2級】の力に対して、倒壊・破壊しない程度に強い住宅または免震構造の住宅【フラット35】Sまたは地震による力(建築基準法で求められている地震力)の1.5倍【耐震1級】の力に対して、倒壊・破壊しない程度に強い住宅【フラット35】S20の基準があります。
構造以外の基準についてはマルタ設計の組織は建築意匠・構造・機械設備・電気設備による総合設計事務所ですので、このブログに安全で快適に暮らせる内容で投稿される機会があるかと思いますのでその時に。
埼玉県越生梅林にて
構造的に、より安全で、快適で住みやすく、長く安心して住める建物が増え、命の尊さを踏まえた社会資本の充実する事を願って。
平山 哲男
その後も余震がM5.6を含むM4.0以上が続いてるようで、被災地の様子なども報道されました。
改めて建物の安全について、命の尊さについて考えさせられます。
日本の地震では平成7年阪神・淡路大震災から16年が経ちましたが、災害の記憶が今でも鮮明に甦ります。地震後は旧構造設計基準建物、昭和56年以前に建設された建物が見直され、耐震診断・耐震補強が進められています。官庁建物や学校建物に耐震補強が完了した建物を見かけられる様になりましたが国内全体的にはまだまだのようです。建物の安全性の改善を図る事の重要性は明らかです。
阪神淡路大震災後、マルタ設計では今まで蓄積した技術(耐震診断・耐震補強)を生かし、耐震診断・免振事業本部を創設しました。
本部創設時から、耐震診断基礎資料として欠かせない建物調査を社内で担当している私は、業務に携わりより的確に、より安全な建物とし、社会資本の充実を目指して歩んでまいりました。
耐震診断に必要な建物調査とは、分かりやすくたとえれば、病院で患者さんの中には色々な病があり、患者さんの申告では正しい診断ができないので、問診、触診、ときには、精密検査を実施して、一人一人の病状に基づき的確な病を把握して処方箋をだし、病を治療する様な事です。
建物調査では、既存設計図と現況建物との照合、経年調査では、ヒヤリングで地震被害、火災被害、漏水箇所、改修経歴のあり、なし、きれつ調査・爆裂調査・コンクリート躯体からサンプルを取り、設計強度の確認をする。建物によってはコンクリート内の主筋本数柱 Hoopピッチの非破壊検査よる確認調査、又はハツリ調査を行います。鉄骨構造建物の場合は仮設足場を組み鉄骨の部材調査をします。鉄骨柱脚についてはアンカーの確認調査をします。
建物1棟ごとの状況を的確に把握して耐震診断の経年指標:T の資料とします。
(調査写真は2008年5月ブログ「会社理念」のなかに投稿されていますので参照して下さい)
建物の耐震性能は構造耐震指標Isを査定する事により、評点で示されます。
Is:構造耐震指標=保有性能基本指標Eo×形状指標Sd×経年指標T
耐震診断には2次診断・3次診断がありますが、最近の官庁発注は2次診断が多いようです。
第2次診断法とは建物の鉛直部材(柱・壁)の強度・破壊形式とじん性能からEo指標を算定する診断です。
第3次診断方とは骨組み(柱・壁・梁)や基礎の浮き上がりなども考慮してEo指標を算定する診断です。
耐震診断の構造解析にはもちろん経験も必要です。建物形状;Sdにより、ピロティ形態、壁位置による全体バランスの考慮、地震時の力の流れを把握、元構造設計者の解析思考を理解して耐震診断します。診断にあたりベースとなる基準はあります。
構造判定指標Iso =0.6 で一般建物は地動250Gal(中地震 計測震度5強)程度の十勝沖地震を想定して設定されています。構造判定指標に重要度用途係数も有ります。
文教施設等はより安全性を確保する為には1.25倍 Iso =0.75、さらに重要度の高い消防署・警察署等の重要庁舎に関しては1.5倍 Iso =0.9。
この用途係数は阪神・淡路地震後、庁舎建物の被害状況を調査し、その分析結果をふまえて改訂版をとりまとめた官庁営繕部総合耐震計画基準の中に、新建物(一般)用の設計用地震力に大きな変更はないが、官公庁建物に1.0倍【耐震3級】・1.25倍【耐震2級】および1.5倍【耐震1級】という用途係数を設計用地震力に乗じるよう、かつ耐震診断においても用途係数を考慮するとしています。
診断結果、構造耐震指数Is=0.6満たない耐震性能が不十分であるものについては耐震補強設計を行う。(2次診断でIs=0.3以下の場合は早急に改修または改築を計画する)
新築建物の構造の動向について話しますと、マルタ設計では地震に強い免震構造建物(建物と地盤との間に免震装置を施し地震の揺れを吸収し、地盤の揺れを直接建物に伝わりにくくした建物)を都立高校では初めて採用された都立高校(大崎高等学校)校舎(担当設計者は同高校の特殊な外構工事の内容で先月のブログに投稿しています)や賃貸住宅では貴重な免震構造建物を採用したエスペランスYAMADAなどを手がけております。
その他に工法として制振構造が有ります。制振構造は新築建物や耐震補強の工法としても採用されています。建物に生じる振動エネルギーを吸収する、同軸型振動系ダンパーが代表例です。
一般の方も最近では戸建、分譲マンションのパンフレットで見かけるかと思いますが、長期優良住宅・マンションに認定と表示された建物が販売されています。
住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が民間金融機関による長期固定金利住宅ローンの提供を支援している長期優良住宅取得支援制度、【フラット35】Sで、優良住宅取得に必要な技術基準を満たした建物の金利を当初10年間1%引き下げる処置で、基準を満たせば10年後も0.3%引き下げる金利の優遇制度です。優良住宅に必要な技術基準について話ますと構造の耐震性・耐久性に関する基準以外に長く安心して暮らせる工夫、長持ち住宅にするための基準、夏は涼しく冬は暖かく快適に過ごせる、省エネルギー性の基準、お年寄りにも優しいバリアフリー性など必修基準となって高品質の住宅基準となっています。
必修基準のなかで耐震性について説明しますと、100年に一度ごくまれに起こる地震による力(建築基準法で求められている地震力)の1.25倍【耐震2級】の力に対して、倒壊・破壊しない程度に強い住宅または免震構造の住宅【フラット35】Sまたは地震による力(建築基準法で求められている地震力)の1.5倍【耐震1級】の力に対して、倒壊・破壊しない程度に強い住宅【フラット35】S20の基準があります。
構造以外の基準についてはマルタ設計の組織は建築意匠・構造・機械設備・電気設備による総合設計事務所ですので、このブログに安全で快適に暮らせる内容で投稿される機会があるかと思いますのでその時に。
構造的に、より安全で、快適で住みやすく、長く安心して住める建物が増え、命の尊さを踏まえた社会資本の充実する事を願って。
平山 哲男
by housingpro
| 2011-03-01 09:30
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