2011年 03月 30日
地震災害後の建物の安全
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東北関東大震災のマグニチュード9.0の地震があり、その後も余震が続いています。
1960年のチリ地震でマグニチュード9.5、2004年のスマトラ沖地震でマグニチュード
9.1という例はありますが、国内でおきた地震としては観測史上最大規模となりました。
地震を感じて怖いと認識した事、津波の自然の驚異を実感した事は初めてです。
信じ難い現実にショックを受けています。
身内では名取市の叔父さんにいまだ連絡が取れず、福島の叔母さんの家は倒壊寸前の
赤札判定されました。この震災を身近に感じており、被害を受けられたみなさまには
心よりお見舞い申し上げますと共に、協力し合って乗り切り、一日も早い復旧復興し、
いつかきっと美しい杜の都を見ましょう。
建物の安全・耐震性に関する考えは津波に根こそぎさらわれましたが、外国での日本の
被災報道の内容は「日本はおそらく世界最高水準の防災対策を講じてきた。それにも
かかわらず、これだけの被害をだした」という事が共通認識の様です。
設計事務所業務内の地震後の対応に関係する情報を伝えたいと思います。
ニュージーランドのクライストチャーチ市を襲った地震災害で、
カンタベリーテレビ・ビルは昨年9月に地震に遭い、地震直後に市当局が構造物専門家の
複数の建築技師に依頼し耐震検査を実施したところ、問題ないとのグリーン札評価を
得ていた建物でした。外国の評価基準を取り上げますと、
SEAOC(カリフォルニア構造技術者協会)は【Vision2000 Committee】を
組織しクライアントに通用する4段階の性能レベルを定義づけています。
a、完全共用可 ( 緑札 )・・・・・ 日本 JARACでは被害度合:無被害
基本的に損傷のないレベルで、地震直後から使用でき、すべての設備や水、電気などが
使える、補修する必要のない建物
b、共用可 ( 緑札 )・・・・・ 日本 JARACでは被害度合:軽微な被害
一部の機能は使用できないが、建物を使っても安全を脅かすものではない。なにがしか
の補修を必要とする。
■避難システム;避難路に大きな障害は生じない。エレベーターは若干の点検後、運転
を再開することができる。
■機械設備;機能および防災諸システムに必要な設備は作動する。
一時的なユーティリティサービスが、必要に応じて供給される。
c、人命保護 ( 黄札 )・・・・・ 日本 JARACでは被害度合:中程度の被害
構造部材、非構造部材、内容物が中程度の損傷状況で、主要構造体が崩壊するまでは
いくらか余裕が残っている。地震直後は使用不能、復旧の可能性はある。
■避難システム;避難路に大きな障害は生じない。エレベーターはしばらくの間
使えなくなる。
■機械設備;外れたり転倒する機器がでる、多くのシステムが作動しない。
配管類が破断する。
d、倒壊寸前 ( 赤札 )・・・・・ 日本 JARACでは被害度合:大損・倒壊
建物の地震に対する抵抗能力が失われている。極端な損傷状態で、余震により倒壊
することも考えられる。使用は危険であり、復旧は不可能である。
■避難システム;避難路に障害が出る、あるいはまったくできない。
■機械設備;大破の被害で諸システムが恒久的に破断する。
カンタベリーテレビ・ビルの前回評価の検討と専門化チームよるビル倒壊原因の調査を
進めるとしています。
最終的な結論がでるのは『2~6ヶ月かかるだろう』と報道されています。
国内では既存建物の耐震性を判定するものとしては、現在進められている、耐震診断が
ありますが、地震災害後の対応としては災害を受けた建物による二次災害を防止するため、
県知事より認定を受けた、被災建築物応急危険度判定士【判定士】が判定し、判定結果を
建物に表示するシステムがあります。写真は日本の判定表示ステッカーです。
調査済 (緑色): 被災建築物が使用可能なもの。
要注意 (黄色): 被災建築物に立ち入る場合は十分注意するもの。
危険 (赤色): 被災建築物に立ち入ることが危険なもの。
判定は構造形式(木造建物・鉄骨造建物・RC造、SRC造)の応急危険度判定調査表から
被災状況を近隣建物状況及び構造躯体に関する危険度や落下、転倒に関する危険度を
A・B・Cランク分けして、判定士が被災状況を調査して判定を下します。
全国被災建築物応急危険度判定協議会は、都道府県相互の支援等に関して事前に
会員間の応急危険度判定の方法、応急危険度判定の実施体制の整備を行うことを目的
として、平成8年4月5日に設立されました。
被災建築物の安全性を確保する第一義的責任は建物の所有者ですが、災害によって多く
の建物が被害を受けた場合、被災建物の所有者、もしくは居住者が被災建築物の安全性を
判定することは容易ではありません。その結果、余震による倒壊等危険な被災建物が使用・
放置され、多くの人が二次災害の危険にさらされる可能性があります。こうした危険を回避
するためにも、被害建築物応急危険度判定士の協力得て行う判定システムが迅速かつ
的確に実施する事を願います。地震災害に遭遇し全倒壊しない建物の中にも、余震により
倒壊がある事を、自分自身の身を守るうえでも、記憶の中とどめておいて
いただけませんでしょうか。
平山 哲男
1960年のチリ地震でマグニチュード9.5、2004年のスマトラ沖地震でマグニチュード
9.1という例はありますが、国内でおきた地震としては観測史上最大規模となりました。
地震を感じて怖いと認識した事、津波の自然の驚異を実感した事は初めてです。
信じ難い現実にショックを受けています。
身内では名取市の叔父さんにいまだ連絡が取れず、福島の叔母さんの家は倒壊寸前の
赤札判定されました。この震災を身近に感じており、被害を受けられたみなさまには
心よりお見舞い申し上げますと共に、協力し合って乗り切り、一日も早い復旧復興し、
いつかきっと美しい杜の都を見ましょう。
建物の安全・耐震性に関する考えは津波に根こそぎさらわれましたが、外国での日本の
被災報道の内容は「日本はおそらく世界最高水準の防災対策を講じてきた。それにも
かかわらず、これだけの被害をだした」という事が共通認識の様です。
設計事務所業務内の地震後の対応に関係する情報を伝えたいと思います。
ニュージーランドのクライストチャーチ市を襲った地震災害で、
カンタベリーテレビ・ビルは昨年9月に地震に遭い、地震直後に市当局が構造物専門家の
複数の建築技師に依頼し耐震検査を実施したところ、問題ないとのグリーン札評価を
得ていた建物でした。外国の評価基準を取り上げますと、
SEAOC(カリフォルニア構造技術者協会)は【Vision2000 Committee】を
組織しクライアントに通用する4段階の性能レベルを定義づけています。
a、完全共用可 ( 緑札 )・・・・・ 日本 JARACでは被害度合:無被害
基本的に損傷のないレベルで、地震直後から使用でき、すべての設備や水、電気などが
使える、補修する必要のない建物
b、共用可 ( 緑札 )・・・・・ 日本 JARACでは被害度合:軽微な被害
一部の機能は使用できないが、建物を使っても安全を脅かすものではない。なにがしか
の補修を必要とする。
■避難システム;避難路に大きな障害は生じない。エレベーターは若干の点検後、運転
を再開することができる。
■機械設備;機能および防災諸システムに必要な設備は作動する。
一時的なユーティリティサービスが、必要に応じて供給される。
c、人命保護 ( 黄札 )・・・・・ 日本 JARACでは被害度合:中程度の被害
構造部材、非構造部材、内容物が中程度の損傷状況で、主要構造体が崩壊するまでは
いくらか余裕が残っている。地震直後は使用不能、復旧の可能性はある。
■避難システム;避難路に大きな障害は生じない。エレベーターはしばらくの間
使えなくなる。
■機械設備;外れたり転倒する機器がでる、多くのシステムが作動しない。
配管類が破断する。
d、倒壊寸前 ( 赤札 )・・・・・ 日本 JARACでは被害度合:大損・倒壊
建物の地震に対する抵抗能力が失われている。極端な損傷状態で、余震により倒壊
することも考えられる。使用は危険であり、復旧は不可能である。
■避難システム;避難路に障害が出る、あるいはまったくできない。
■機械設備;大破の被害で諸システムが恒久的に破断する。
カンタベリーテレビ・ビルの前回評価の検討と専門化チームよるビル倒壊原因の調査を
進めるとしています。
最終的な結論がでるのは『2~6ヶ月かかるだろう』と報道されています。
国内では既存建物の耐震性を判定するものとしては、現在進められている、耐震診断が
ありますが、地震災害後の対応としては災害を受けた建物による二次災害を防止するため、
県知事より認定を受けた、被災建築物応急危険度判定士【判定士】が判定し、判定結果を
建物に表示するシステムがあります。写真は日本の判定表示ステッカーです。
調査済 (緑色): 被災建築物が使用可能なもの。
要注意 (黄色): 被災建築物に立ち入る場合は十分注意するもの。
危険 (赤色): 被災建築物に立ち入ることが危険なもの。
判定は構造形式(木造建物・鉄骨造建物・RC造、SRC造)の応急危険度判定調査表から
被災状況を近隣建物状況及び構造躯体に関する危険度や落下、転倒に関する危険度を
A・B・Cランク分けして、判定士が被災状況を調査して判定を下します。
全国被災建築物応急危険度判定協議会は、都道府県相互の支援等に関して事前に
会員間の応急危険度判定の方法、応急危険度判定の実施体制の整備を行うことを目的
として、平成8年4月5日に設立されました。
被災建築物の安全性を確保する第一義的責任は建物の所有者ですが、災害によって多く
の建物が被害を受けた場合、被災建物の所有者、もしくは居住者が被災建築物の安全性を
判定することは容易ではありません。その結果、余震による倒壊等危険な被災建物が使用・
放置され、多くの人が二次災害の危険にさらされる可能性があります。こうした危険を回避
するためにも、被害建築物応急危険度判定士の協力得て行う判定システムが迅速かつ
的確に実施する事を願います。地震災害に遭遇し全倒壊しない建物の中にも、余震により
倒壊がある事を、自分自身の身を守るうえでも、記憶の中とどめておいて
いただけませんでしょうか。
平山 哲男
by housingpro
| 2011-03-30 11:20
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