2011年 03月 16日
忘れる前に…
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11日に発生した東北地方太平洋沖地震から5日が経ちました。
未だ生活に影響は残り、早く日常に戻れることを願っています。
それでもこの非日常の中、
強く感じた思いは忘れないうちに記しておきたいと思います。
別の職場での話になりますが、
福島第二原発の事務所棟の設計に携わったことがありました。
原子力発電所は、事務所棟であっても設計クライテリアは普通の建物と違うものになります。
重要な設備を含む施設なので、大地震時においても損傷のないよう免震構造を採用。
放射性物質を遮断できるようにもちろん鉄筋コンクリート造。
通常の3階建ての建物では考えられない、壁厚400~1000mm。
原子炉のある方角には開口部を作らない等々。
耐震性能に関しては通常の1.5倍以上を施主である東京電力から要求されました。
免震評定の建物なので、通常の設計ルートではありませんが、
短期応力に相当する計算では、
外力を算出するための係数Co=0.3を(0.3x1.5=0.45<)0.5に置き換え計算。
断面を決定する際に採用するせん断力は、更にその2倍とします。
応答解析における地震波は過去に発生した地震、その建設場所の地層を考慮した
波を東京電力から提示され、更に安全を見込んだ設計をしました。
「これでもか」というほどの安全率。
事務所棟でもこれなので、原子炉などはきっとこれより厳しいのだと想像します。
(そもそも、原子炉が建築物かどうかは私には分かりませんが。)
RC造の設計をした人は多分、一度は経験していると思うのですが
部材断面が足りないので、大きくしたら応力が増えて更に断面が足りなくなる…。
というループに陥り、
「ほんとに、こんなに必要ですか???」と訴えながら仕事していた記憶があります。
例えこんなに安全率を見込んでいたとしても、
想定外の地震が来てしまえば「絶対に大丈夫です。」
とは言えないところが設計の限界です。
現在、告示で要求されている大地震時(極めて稀に発生する地震と言われるもの)
の最大速度は50カインを基準としています。
大雑把な説明をすると、地震入力速度の10倍程度が入力加速度の数値になる地震波が多いです。
つまり、告示の想定している大地震は最大加速度が500ガル程度ということになります。
これは関東大震災の推定最大加速度が400ガル程度だったことからだと記憶してます。
でも、兵庫県南部地震の最大加速度は約900ガルでしたし、
今回の地震における測定値は約2900ガルだったそうです。
(誤解のないように:
福島第一・第二原発は宮城県沖地震が頻発している地域なので
応答解析をしているならいわゆる告示波だけでなく、
サイト波と言われる想定される大きな地震波で設計されているはず。
また、設計で言う最大加速度は地盤面におけるものなので今回の測定値と
直接比較できるものでもないです。)
今回改めて感じたことは
実際に地震がおきて、多くの被害者が出たとしたら、
「法規を満たして設計しているのだから、想定外の地震が来たら仕方ない。」
…と、簡単に思えるものでもないということ。
あたりまえのことですが、
計算書で「OK」を出したら大丈夫なんて錯覚はせず、
少しでも安全な建物を作るように、この気持ちを忘れず仕事を続けていこうと思います。
最後になりましたが、
被害を受けられたみなさまに心よりお見舞い申し上げます。
一日も早い復旧復興をお祈り申し上げております。
※写真は千葉に住む友達から、「近所はこんな感じ」と送られてきたものです。
大島 千鶴
未だ生活に影響は残り、早く日常に戻れることを願っています。
それでもこの非日常の中、
強く感じた思いは忘れないうちに記しておきたいと思います。
別の職場での話になりますが、
福島第二原発の事務所棟の設計に携わったことがありました。
原子力発電所は、事務所棟であっても設計クライテリアは普通の建物と違うものになります。
重要な設備を含む施設なので、大地震時においても損傷のないよう免震構造を採用。
放射性物質を遮断できるようにもちろん鉄筋コンクリート造。
通常の3階建ての建物では考えられない、壁厚400~1000mm。
原子炉のある方角には開口部を作らない等々。
耐震性能に関しては通常の1.5倍以上を施主である東京電力から要求されました。
免震評定の建物なので、通常の設計ルートではありませんが、
短期応力に相当する計算では、
外力を算出するための係数Co=0.3を(0.3x1.5=0.45<)0.5に置き換え計算。
断面を決定する際に採用するせん断力は、更にその2倍とします。
応答解析における地震波は過去に発生した地震、その建設場所の地層を考慮した
波を東京電力から提示され、更に安全を見込んだ設計をしました。
「これでもか」というほどの安全率。
事務所棟でもこれなので、原子炉などはきっとこれより厳しいのだと想像します。
(そもそも、原子炉が建築物かどうかは私には分かりませんが。)
RC造の設計をした人は多分、一度は経験していると思うのですが
部材断面が足りないので、大きくしたら応力が増えて更に断面が足りなくなる…。
というループに陥り、
「ほんとに、こんなに必要ですか???」と訴えながら仕事していた記憶があります。
例えこんなに安全率を見込んでいたとしても、
想定外の地震が来てしまえば「絶対に大丈夫です。」
とは言えないところが設計の限界です。
現在、告示で要求されている大地震時(極めて稀に発生する地震と言われるもの)
の最大速度は50カインを基準としています。
大雑把な説明をすると、地震入力速度の10倍程度が入力加速度の数値になる地震波が多いです。
つまり、告示の想定している大地震は最大加速度が500ガル程度ということになります。
これは関東大震災の推定最大加速度が400ガル程度だったことからだと記憶してます。
でも、兵庫県南部地震の最大加速度は約900ガルでしたし、
今回の地震における測定値は約2900ガルだったそうです。
(誤解のないように:
福島第一・第二原発は宮城県沖地震が頻発している地域なので
応答解析をしているならいわゆる告示波だけでなく、
サイト波と言われる想定される大きな地震波で設計されているはず。
また、設計で言う最大加速度は地盤面におけるものなので今回の測定値と
直接比較できるものでもないです。)
今回改めて感じたことは
実際に地震がおきて、多くの被害者が出たとしたら、
「法規を満たして設計しているのだから、想定外の地震が来たら仕方ない。」
…と、簡単に思えるものでもないということ。
あたりまえのことですが、
計算書で「OK」を出したら大丈夫なんて錯覚はせず、
少しでも安全な建物を作るように、この気持ちを忘れず仕事を続けていこうと思います。
最後になりましたが、
被害を受けられたみなさまに心よりお見舞い申し上げます。
一日も早い復旧復興をお祈り申し上げております。
※写真は千葉に住む友達から、「近所はこんな感じ」と送られてきたものです。
大島 千鶴
by housingpro
| 2011-03-16 12:23
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